Crap!....

拍手御礼第一弾
【その1】
ビュリダンの驢馬:等しい距離に全く同じ干草の束を置かれた驢馬はどちらに進めばいいのかわからずに飢え死にしてしまうという数学上のジレンマ。
 Qマルチェロが二人、等距離に立っています。ククールはどうすればいい?
 Aどっちにも進めず飢え死にしてしまう。(回答者:主人公)
 
【その2】
アキレスの亀:足の速いアキレスが一定距離を進むあいだに亀はその半分だけ進むとする。するとアキレスはのろいはずの亀にいつまでたっても追いつけないとする数学上のジレンマ。
 Qククールがマルチェロを追いかけています。追いつく?
 Aムリムリムリムリ〜(回答者:ムリーちゃん)
 
【その3】
シュレーディンガーの猫:猫の入っている箱には目に見えないガンマ線を放射するスイッチがランダムで発射される仕掛けがある。このとき、箱の中にあるのは「生きた猫」「死んだ猫」をあらわす可能性だが、箱を開ければ多分、死んでいる猫を見出すことになる。このとき猫を殺したのは観察者である。
 Q箱の中にマルチェロが入っています。開けたら生きてる?
 Aそれ箱? なんか棺に見えるんだけど?(回答者:ゼシカ)
 
【その4】
ラプラスの魔:全粒子の動きを予測でき、ひいては未来過去すべてのことを知るとする数学的な想像上の存在。
 Qククールはこれから起きることすべてを予測できるとします。どうなる?
 A兄貴に逃げられる。(回答者:ヤンガス)
 
【その5】
ホワイトヘッドの亀:田舎の駅員の鉄道案内に基づいた分類規定によると、亀も「虫」になってしまうという分類法への皮肉。
 Q夫婦者が二人で乗っても料金は30G。俺たちが二人で乗っても30G。ということは俺たちはグゲ
 Aのど仏は急所だということがよくわかっただろう。(回答者:マルチェロ、出題者は病院行)
 
拍手御礼第二弾
【その1】
 オディロ院長のはからいで同室となった兄弟だったが、マルチェロはククールのことをなにくれとなくいじめた。それで、さすがに頭にきたククールはある日、仕返しをしようと考えて、たまたま兄が朝寝坊した機会を捉えて部屋の日誌に書いた。 「今日、マルチェロは寝坊をした」
 マルチェロは当然ながら日誌を読んだだろうが、何も言わなかった。日誌は週の終わりに院長が集めて読む。きっとマルチェロは怒られるに違いないと、後ろめたい気分になりながらもククールは楽しみにしていた。
 しかし週末、院長が呼び出したのはククールだった。なんで僕がと言いかけたククールに、黙って院長は日誌を示した。ククールが告げ口を書いた翌日のページに、マルチェロの几帳面な字で書かれていたのは――
「今日は、ククールは寝坊をしなかった」
 
【その2】
 今日も今日とてドニの酒場で遅くまで過ごして門限を破ったククールは、ほろ酔い加減で修道院にこっそり戻ってきた。しかし堪忍袋の緒を切らしたマルチェロが頭から角を生やして門の前で待ち構えているのを遠くから発見。こりゃまずいと、トリ小屋を通って裏庭に出ようと考えた。
 しかし、熟睡していたニワトリたちも、さすがにひと一人忍び込んできたのには気づいて大騒動。コケーコッコと騒ぐニワトリの群にククールは判断を誤ったことを知ったが時既に遅し。騒ぎを聞きつけたマルチェロが剣を構えて小屋の戸を開けた。
「おい、誰かいるのか?」
「だ、だれもいません、団長殿。俺たちニワトリだけですだ」
 ククールが引きずり出されて拷問室行きになったのは言うまでもない。
 
【その3】
 聖堂騎士団ではほとんどの聖務は通常の共通語で行われることになっていたが、ごく稀に、団長の就任式や高位の僧の葬儀、院長による法皇使節の臨見などは古語で行われることもあった。俺は子どものころから普段は年齢にふさわしからず大人しいのだが、どうにも歯擦音の多いちんぷんかんぷんな言葉で執り行われる儀式だけは退屈で、もぞもぞと身じろぎしてしちまう。
 あれは確かその年の見習いたちが騎士の叙任を受ける式だった。マルチェロはもう騎士になっていて、団長の横できれいな紺色のローブを着て式の進行を助ける役をしていた。そのときだって、悪気はあったわけではない。ただ勝手にぱたぱたと両足が動いて妙に響く音を立ててしまっていただけだ。なのにそうだ、あのマルチェロときたら、凍りつきそうに冷たい緑の目で、ぎろっとこっちを見て言ったもんだ。
「あれの立てる物音を翻訳するとしたら、退屈で退屈で仕方ないとでもいうところですかな」
 満場の冷たい視線に絡まれて、俺ってすげえ恥ずかしい思いをしたんだ。
 
【その4】
 ある日、こともあろうに兄貴が子猫を一箱拾ってきたんだ。白と黒のぶちの四匹の子猫どもはどれもまだ目も開いていなくて、木箱の中でみゃーみゃー哀れっぽい声をたててた。さすがに台所番のおっさんは目くじら立てたけど、ほら、オディロ院長があれだろ。結局は院内で飼っていいってことになったんだ。兄貴はさ――いつもの仏頂面のまんまで猫どもに餌をやってたね。鼻先舐められても肩に乗られても仏頂面なんだぜ。
 そんで、あれは猫どもが来てから三月もしたころだったかな。兄貴の留守に雨が降り出したんで、俺が猫どもの巣箱を屋根の下に引っ張り込んでたんだよ。ま、点数稼ぎだな。泣けるだろ。まあそんなことはいいんだけどさ、そしたら猫どもが人懐こくてさ。足にすりよってくるわ、背中に乗ってくるわでやりにくいのなんの。そんでもまあなんとか軒下に入れてやって、少し疲れたんでそのまま座り込んでたんだよ。そしたら一番チビの鼻の頭に黒いブチのあるのが俺の膝の上にのってきて、丸くなっちまったんだよ。
 うん、動けないわな。それでぼーっとしてたら眠っちまったんだ。寒いなあって思いはしたけどさ。で、乱暴に体をゆすられて目を覚ました。兄貴が目の前に立ってなんか怒鳴ってるんだけど、なんかぼうっとしてよく聞こえないわけ。そのうちまたすうっと眠くなって、寝ちまったんだよ。なんだかゆらゆら揺れる、いい夢を見たような気がするよ。
 次に気が付いたら自分のベッドで、それから俺は三日ばかりカゼ引いて寝込んだってわけ。兄貴はイヤな顔するし、院長は心配するしでいいことはあんまりなかったね。でも、しばらくしてからふっと思い当たったんだ。俺をベッドまで運んでくれたのは、兄貴じゃなかったのかってさ。いや、本当かどうかなんて、怖くて聞けないままで今に至ってんだけどよ。
 
【その5】
 オディロ院長ってのは不器用な人でさ、ケーキなんか切ると、絶対に真っ直ぐ切れないんだよ。本人は二つに割ったつもりでも、まず大小ができてる。これがねえ、子どもの俺にとっては悩みの種だったよ。
 俺と兄貴がまだガキの頃、院長は俺らをまとめてお茶に呼ぶことがあったんだ。それで、たいてい貰い物のケーキを二つに割って、好きな方を取りなさいって俺らに勧めたんだ。うん、甘いものなんかそうそうあるわけない修道院だからさ、ケーキを食べれるのは嬉しかったんだぜ。普段なら傍にも寄れない兄貴だって院長の前だからそうそうきついことは言わないしな。
 だけど、問題はいつだってケーキがいびつに切られてたってことなんだ。ちょっとくらいの大小だったらいいけど、ひでえときなんか半分どころじゃない比率になってたりしてな。
 院長はいつだって「兄の方から取りなさい」って言うんだけど、兄貴だって困ってたと思うな。大きい方を取るのは欲張りみたいだし、小さい方を取るのも気兼ねをしてるのがありありって感じで嫌だしってとこかな。断っても院長は絶対言うこと聞かないしなあ。よくすげえ難しい顔して、じいっとケーキとにらめっこしてたよ。
 で、どうしたかって? うん、大抵はでかい方を取ってた。なんでかは知らないぞ。甘いものを好きだって話も聞かないし、大方、でかい方を俺に譲ったと思われるのが嫌だったんじゃねえか。本当のところは――どうだかな。
 そうだな、探し当てたら聞いてみるさ。じゃあ、俺、もう行くよ。さよなら。
 
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