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【序論】 歴史は語り手を無視しては正確に読み解くことはできない。 そしてほぼ唯一の手がかりとなる原典『シルマリルリオン』は、「シンダールエルフの伝えたもの」という設定のもとに書かれている。 「ケレゴルムは兄弟たちを扇動して、ドリアス襲撃を準備した。かれらは、冬の最中に不意に奇襲を仕掛け、千洞宮でディオルと戦い、ここに、二度目のエルフによるエルフの殺傷が行われた。ここでケレゴルムは、ディオルの手にかかって死んだ。クルフィンも死に、黒髪のカランシアも死んだ。」(評論社『シルマリルの物語』p400) ここで、まず最初の前提である。 カランシアはシンダールにとって王ディオルの仇である。史実に対するシンダリアンの良心がどの程度まで望めるかは別の話であるが、読み手の側としては、少なくともシンダールとの関係についての記述は頭から信用するべきではないといえよう。このことを念頭に置いて、次項以下、カランシアの人となりについて見てゆく。 |