弟→兄考察....4

【煉獄島】
「あんたは俺が死んでもどうってことないんだ。俺はあんたがいなくなることがこんなに恐ろしいのに」
 
 マルチェロとの遭遇はもっとも望ましくない形で立ち現れた。別離の間にマルチェロは変わり、しかも最悪な方向に変わった。ククールはここに、最初の葛藤を更に先鋭化した形で突きつけられる。こうも明確な形で見せ付けられたことは修道院の時代にもなかった。
 いびつで一方的な兄弟の関係を明らかにまた逃れようのない形で見せ付けられたククールが、煉獄島でいかなる変化を果たしたかは完全に捕捉することはできない。しかし一つのもの、成長し強さを増した心身をしてようやく支えきれるもの――ある種の冷酷さを彼はようやく身に着けたのではないかと考えることは十分に理由があると思われる。
 この場合の冷酷さとは、覚悟である。負いきれない重荷を負う覚悟である。ククールは仲間を得て世界を見た。それらが糧となって、今やマルチェロを殺すという概念に耐えることができるのである。もっと日常的な言い方をするなら、ククールはマルチェロに嫌われる覚悟ができた。それはつまり、ククールがマルチェロをより力強い方法で愛し始めたということでもある。「あんたが俺を嫌いでも、俺はあんたが好きだよ」
 その強さをククールは初め、呪いさえしたのではないだろうか。その強さのゆえに、彼はもしかしたら本当に兄を殺すのである。三分の二の確率で。残る三分の一にすがるのはまだ根強い彼の弱い愛である。「あんたに愛されるためなら、俺はなんでもする」
 ククールの省察と感情はようやく重なった。ククールは力強く、だが不安に満ちて影から歩みだし、太陽を見上げたのに違いない。それは地下からの生還であるという以上に、新たな誕生ではなかっただろうか。
 
 
 
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